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Q12 フケの原因となる「かび」とは?

フケの原因は……?

フケ症は、脂漏性皮膚炎の初期症状の1つであり、マラセチアと呼ばれるかび(真菌)がその原因となることがあります。このかびは、増殖に脂質(油)が必要なため、皮脂腺から分泌される皮脂を栄養にして増殖していきます。皮脂はマラセチアが分泌する酵素リパーゼにより脂肪酸に分解され、それが炎症を惹起します。皮膚を顕微鏡で観察すると球形から卵形をしたマラセチアを観察することができます。

マラセチアはどんなかび……?

マラセチアはかび(真菌)の仲間ですが、形に由来して「酵母」と呼ぶこともあります。環境中には存在せずヒトの皮膚に常在しています。
「常在」とは、フケ症のヒトだけではなく、すべてのヒトの皮膚に「常」に「存在」しているということです。増殖に脂質が必要であることから、皮脂の多い部位、例えば頭や顔には、手足よりも多く存在しています。マラセチアとは属名で、ヒトでいうと名字に相当します。家族(種名)は11の菌種から構成されています。しかしこのうち、フケに一番関与するのは、マラセチア・レストリクタという菌です(写真1)。その他に、マラセチア・グロボーサ(写真2)やマラセチア・シンポディアリス(写真3)という菌も関与していると考えられています

  • <写真1>
    マラセチア・レストリクタ
  • <写真2>
    マラセチア・グロボーサ
  • <写真3>
    マラセチア・シンポディアリス

マラセチアを除菌するには……?

マラセチアが原因となっている「脂漏性皮膚炎」や「フケ症」は、原因であるマラセチアを除菌すれば症状は良くなります。そのためには抗真菌薬というお薬を使います。抗真菌薬と一口にいっても、それぞれのお薬の効き目には特徴があります。例えば水虫を得意にするお薬とか。マラセチアは11菌種ありますので、すべての菌を効率よく除菌することが必要です。それには、ケトコナゾールクリームまたはローションが効果的です。しかも、ケトコナゾールに耐性(注:どんなにたくさん投与しても効かない)のマラセチアはいません。

真菌とヒトとの関わり合い

顕微鏡を使わないと見えない小さな生物を「微生物」と呼びます。微生物には、大腸菌に代表される「細菌」、インフルエンザ等の「ウイルス」、そしてマラセチアや水虫が含まれる「真菌」があります。「真菌」には、俗にいう、「かび」や「酵母(イースト菌)」に加えて「きのこ」も含まれます。微生物の中では真菌の数が最も多く、約10万種近くが知られています。この中には、「良い真菌」と「悪い真菌」があります。「良い真菌」は古くから醗酵食品に用いられてきました。大豆を麹菌(アスペルギルス・オリゼ)で醗酵させたものが醤油や味噌です。お米を麹菌と酵母で醗酵させると日本酒ができます。沖縄で有名な泡盛は、別の麹菌(アスペルギルス・アワモリ)を使います。ビールやワインは酵母(サッカロミセス・セレビジエ)によって作られます。食べられる真菌はきのこです。きのこがかびと同じ仲間であるのは不思議に思われますが、菌の細胞は糸状になり(=菌糸)、これから胞子ができます(=胞子形成菌糸)。菌の中にはこれらが柄を持って立ち上がったり、傘の様な構造(=子実体)となります。これがきのこです。植物で言えば、子実体は花や果実に相当します。また、かびから医薬品を作ることもできます。コレステロールを下げるお薬(=高脂血症薬)や、ペニシリンに代表される抗生物質は、青かび(ペニシリウム)から発見され、今日の人類の健康増進に大きく寄与しました。

一方で、「悪い真菌」も存在します。悪い真菌が原因となる病気を真菌症と呼びます。これは、皮膚に起きる表在性真菌症と臓器や血液に起きる深在性真菌症に大きく分ける事ができます。水虫やタムシ(白癬菌(かび))は表在性真菌症と呼ばれます。深在性真菌症の多くは、アスペルギルス(かび)やカンジダ(酵母)と呼ばれる真菌が原因となります。アスペルギルスは環境中のどこにでも存在しており、またカンジダは常在菌として、口腔や腸管に存在しています。これらの真菌は健康なヒトには病気を起こしませんが、免疫が著しく低下している患者さんでは、深刻な状態になることも少なくありません(=日和見感染)。

これらの病気には、イトラコナゾールやケトコナゾールといった抗真菌薬で治療します。悪い真菌は色々な種類がありますので、相手に応じた抗真菌薬を適切に使うことが大事です。

ご解答いただいた先生

杉田 隆先生
明治薬科大学微生物学教室教授
杉田 隆先生